死ぬ権利を求めて~新たな闘い

ハナママゴン

23年前の交通事故で重度の身体障害を負ったポール・ラム(57歳)。医師による薬物注入による『死ぬ権利』を求めていたものの、昨日、却下された。

彼は最高裁判所に上告し、『人間的な、尊厳ある死』を求めて闘い続けることを誓った。

夫トニー・ニックリンソンの死後も、代理として彼の『死ぬ権利』を求めて闘ってきたジェーン・ニックリンソン(下右)。彼女の訴えも同時に退けられた。

(トニー・ニックリンソンのケースについてはをどうぞ。)

 

              

 

元大工のポールは、1990年に交通事故に遭い、首から下は右手がわずかに動かせるだけという、ほぼ全身麻痺状態になった。その上彼は、慢性的な苦痛にさいなまれている。数限りない薬を試し、覚えきれないほどの専門医に診てもらったが、苦痛を和らげることはできなかった。

昨年8月にトニーの『死ぬ権利』が否定され、続いてトニーが死を迎えたあと、ポールはトニーの未亡人ジェーンのサポートを得て闘いを受け継ぐことを決意した。

トニーと違って会話はできても、ポールもトニーと同じ強い信念を持っている。 『人は、平和に満ちた人間的な死を、自らが選んだときに迎えられるべきである。』 しかしトニーもポールも、そうするためには医師の助けが要る。

「トニーのケースを追ってきた。彼に起きたことは、彼と彼の家族にとって、とてつもなく残酷だった。法律は間違っている。変えられなければならない。」 半面で微笑んで、ポールは言った。 「誰かが闘い続けねばならない。どうやら自分にその役目がまわってきたようだから、引き受けるとするよ。」

二人の子供を持つポールは、子供たちが成長するのを見てきた。現在は孫にも恵まれている。だが孫と遊ぶ日も、孫の小さな手を握る日も、決して来ない。家族にハグされても、それを感じることはない。離婚し一人暮らしの彼は、わずかに動く右手で操作する電動車椅子で屋内を移動する。寝室のベッドの上には、彼を吊り上げるための電動リフト。彼の毎日は、ヘルパーによって支えられている。

「最悪なのは痛みだ。脊髄損傷によくあるらしいが、まるで車にはねられたようなものすごい苦痛なんだ。普通車にはねられたら病院に運ばれて苦痛は和らげられるが、私の場合、それがない。一日24時間、苦痛がある。苦痛の強さには波があるが、なくなるということは決してない。」

 

         

 

事故に遭う前のポールは、大工とトラック運転手を兼業する活動的な男だった。 「でも今は、どこへ行くにも『車椅子入場可』でなければならない。」

事故に遭ったのは、午前2時頃だった。事故の記憶はないが、路上で発見されたことは覚えている。次に覚えているのは、病院の集中治療室にいたこと。事故後の数日間の記憶は曖昧だが、体を動かせないと気づいたことを覚えている。看護師が来て、彼は両脚の機能を失ったと告げた。その後、両腕と両手も。最もプライベートなことさえ、もはや自分ではできないと知ったときは絶望した。

「決して慣れるということはない。決して。最初に介助されたときは・・・信じられなかった。胸が張り裂ける思いだった。自分の生活があんな風に一変してしまったなんて。」

病院で一年過ごしたあと、ポールは妻と二人の子供(当時10歳の息子と8歳の娘)の住む家に戻った。家の改造がされるまで、ポールは子供たちと階下で眠った。

「ある晩眠れなくて、子供たちを見ていた。彼らは眠っている時でさえ、悲しそうに見えた。それで思った。何とかしなくちゃ。家族を壊すわけにはいかない。子供たちはまだこんなに幼いのに。」

ポールは子供たちに、自分の痛みを悟られないよう努めた。しかし近年息子と話したとき、彼の努力はときには不成功に終わっていたことを知った。「息子は私が苦痛のあまり叫び、夜泣いていたことを知っていたんだ。でも息子は、私を誇りに思うと言ってくれたよ。」

 

         

 

現在57歳のポールは、痛みは良くなるどころか悪くなってきていると言う。面白い映画や本で痛みを紛らわせることもできない。 「歯がひどく痛んでいるときに映画を見たり読書したりすることを想像してほしい。痛みが常にそこにあって、集中できないんだ。」

考えられる限りの薬も試したが、望むような効果はなかった。「強力なモルヒネやケタミンは、私から機能を奪って意識朦朧のゾンビみたいにしてしまう。そして目覚めれば、また同じ痛みだ。」

まだ十分な余生の見込めるポールは、将来を危惧し、自分の人生の終焉を自らコントロールしたいと望む。

「約3年間も床ずれを負ってきた男を見たことがある。体位を変えるとき、彼は悲鳴を上げていた。あの姿が、心に焼き付いてしまった。

 『もし私があなたの立場だったら、もっと別の考え方をする』という人がいるが、あれは頭に来る。

 “ちょっと待ってくれ。自由に体を動かせるし痛みもない人間が、どうしてそんなことを言えるんだ?”ってね。」

 

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